越境型移動舞台芸術祭
Creators’ Cradle Circuit 2021 Loei & Tokyo

パラダイムシフトとマルチカルチュラルな身体の再考

感染症の拡大、その背景にある環境破壊や格差社会など進行中の現代社会の問題。グローバル化のもたらした多文化が交錯する社会に置かれた身体について再考する。

Creators’ Cradle Circuit(3Cs)は、アジアの新進舞台芸術家たちが、それぞれの活動域を越境してアジア諸都市に集い、移動を共にしながら作品を育て、新たな舞台芸術の価値や表現を実験する「越境型移動舞台芸術です。

3Cを実現するための2年間のリサーチを経て、Karakoaと3人のプロジェクト協力者は、東南アジア、日本、台湾からの6組8名のアーティストとともに、今シーズンは、7月にルーイ(タイ)、9月に東京(日本)で展開します。

新型コロナウィルス感染症の世界的な感染拡大の防止策として講じられている各国の出入国制限に応じて、3Csの参加アーティストは母国にとどまりながら、リモート・ボディとなる現地のパートナーとの共同を通じて、活動をオンラインとリアルな場を横断するハイブリッドな形式で開催します。

3Cs 2021 Tokyo: 変異する舞台芸術
2021年9月23日〜9月26日

この9月の「3Cs 2021 Tokyo: 変異する舞台芸術」は、北千住のアートスペースBUoYが「芸術と抵抗」をテーマに今年から主催するBUoYフェスティバルの一環として開催される。新型コロナ感染の拡大で移動制限が拡大される今、加速度的にリアルとデジタルに分断されていく私たちの世界に焦点を当て、その2つの異なる世界を舞台芸術のメソッドを活用しながら、東京のコラボレーターたちと共に国や地域、領域を縦横無尽に横断し、再び「つなげる」ことを試みます。海外のアーティストは日本には来られないが、各チームはオンライン映像作品をインターネット上で発表すると同時に、東京のコラボレーターとの共同リサーチ・創作を進め、北千住BUoYで、演劇、サウンドインスタレーション、レクチャー・パフォーマンスなどを実施。各アーティストが展開してきたプロジェクトの成果をみせる。会期中には2回、日本の批評家が、アーティストや観客と作品について議論するためのポスト・パフォーマンス・ディスカッションも開催。全コンテンツ、ライブ配信も行う。

3Cs @BUoY

BUoYでのセッションは日本語―英語で行われます。(一部日本語のみ) タイムテーブルはこちら

全てのセッションはKarakoa YouTubeページにてライブ配信されます(視聴無料)。

プレッシャー? | アユ・ペルマタ・サリ
2021年9月23日(木)18:30-20:00 アーティストトーク付き
2021年9月25日(土)13:00-13:30
東京でも『プレッシャー?』を創作するためのリサーチを続けていきます。日本から新たな共同制作者を迎え、新たな挑戦へと向かうことになります。異なる文化において発生するさまざまな現象を読み解くために、アユと共同制作者の具体的な経験の範囲の中で、『プレッシャー?』の根底にある「交渉」という概念について、広く、深く分析していきます。そのことで、コンセプトの探求と、身体(または話し言葉の)言語に基づいた芸術的素材の探求の両方を促します。選ばれた日本の女性パフォーマーとの共同作業は、よりチャレンジングな創作過程となるでしょう。バーチャルのミーティング・スペースで、2人が対話をしながら「交渉」という概念をもとに、自分の意見を守った際の経験について意見を交わします。コラボレーションの最後には、2人が「肌で感じた異文化の経験」を通して創作した作品を発表し、皆さんにお届けします。それでは、会場でお会いしましょう!!
ライブ配信視聴(無料)の申込
アーティスト
アユ・ペルマタ・サリ

コラボレーター・出演
遠藤麻衣

キュレーター
スカール・プトゥリ・ハンダヤニ

ドラマターグ
ニア・アグスティナ

映像作家
エム・アジ・ヌグロホー

アーティストの3Csオンライン作品を見る
瞬間的なイメージ、瞬間的なサウンド | チャナポン・コンカン
2021年9月24日(金)16:30-18:00 アーティストトーク付き
2021年9月26日(日)13:00-13:30
『瞬間的なイメージ、瞬間的なサウンド』は、異なる設定における時間知覚や、受け手の知覚に哲学的な影響を与える心象や音波を生み出す、身体と周囲の環境との関係性を追求するシリーズです。前回のタイでは、タイ北部ルーイ県のダン・サイとタイ中部カーンチャナブリー県のサンクラブリーとの間で、オブジェやストーリーを交換しながら、人生や生活の繋がりを感じとるコラボレーションを行いましたが、そのプロセスから派生した企画です。今回は、音を通して、東京という大都市のスピード感を知覚する意識について実験していきます。そして音の流れを瞬間的に乱すことで、都市の音風景から異質な部分を抽出することが可能なのか問いかけます。
ジョシュ運動 -世代を超えた女性たちの共鳴 | チョウ・クゥアン・ジョウ, チェン・イー・チン
2021年9月25日(土)14:30-16:30 アーティストトーク付き
2021年9月26日(日)14:30-15:30
「ジョシュ運動」は、世代を超えたアジアの女性たち(50代〜60代、20代〜30代)の体験に焦点を当て、世代をまたがって、女性たちがどのように考え、社会におけるジェンダーの潮流にどのように呼応しているか理解するためのコンセプチュアルなプロジェクトです。二人のアーティス、トクゥアン・ジョウとイー・チンによる、世代を越えた女性たちとのフィールドワーク、身体を使った実験的なワークショップやパフォーマンスを通して、既成のジェンダーに関する思い込みや先入観を切り離すことを目的とした企画です。このプロジェクトを通して、今まで何人かの異なる世代の女性たちにインタビューを行い、その成果を台湾とタイのルーイ県で発表しました。
東京では、BUoYアートフェスティバルに参加し、1時間ほどのレクチャー・パフォーマンスを現地の会場で発表します。女性たちがインタラクティブな経験や命題的省察を身体の動きで体現してく姿をご覧いただきたいと思います。さあ、皆さんも全ての女性たちと一緒に革命に参加しましょう!
ライブ配信視聴(無料)の申込
アーティスト
チョウ・クゥアン・ジョウ
チェン・イー・チン

コラボレーター・出演
佐藤朋子

映像撮影
邱条影室/邱垂仁

ビデオ提供
Thinkers’ Studio、Low Fat Art Fes

ビデオ編集
ウー・チ・ワイ
ウー・タイユン
ウェイチー・リー

日本語字幕
ウェイ・ペイウェン
榊原香純

キュレーター
カオ・イーカイ

プロジェクトプロデューサー
ビビアン・リー

助成
National Culture and Arts Foundation

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名取川(東京ver.) | 日和下駄, カゲヤマ気象台
2021年9月23日(木)16:00-17:30 アーティストトーク付き
2021年9月24日(金)15:00-15:30
「円盤に乗る派」はこれまでのプログラムを通じて、オンラインや都市における「バーチャル」なもののありさまを追求し、さまざまなアプローチを行ってきた。リアルの劇場にて上演される今作では、それら「バーチャル」なもののありさまを改めて劇場にて検証し、劇場の空間を問い直す。「バーチャル」というキーワードから改めて劇場に光を当て、その未知なる可能性を追求することは、「何が劇場を劇場たらしめているのか」を探ることでもあり、また同時に「何が劇場に裂け目を入れてしまうか」を検証するということでもある。そのときにフォーカスするのは俳優並びに観客の身体ということになるだろう。成立する瞬間においても、崩壊する瞬間においても、劇場は新たな一面を見せてくれるに違いない。
ようこそ | ラウル・エル・ラキティコ・ジュニア
2021年9月23日(木)13:00-15:00 アーティストトーク付き
2021年9月24日(金)13:00-14:00
2020年にムーブメントの共同リサーチとして始めた「Choreographing in the Cloud」シリーズは、コミュニティーにおけるカラオケ文や人が作った物と仕組みが、集合的かつ多様なアイデンテーにどのように反映されているか探ることを目的としたプロジェクトです。『Choreographing in the Cloud: Welcome』では、ロックダウン中のマニラに住むフィリピン人アーティストが、東京にいる日本人アーティストに自宅をバーチャルで公開します。距離を隔てた二人の身体が、それぞれの空間をどのように(再)表現するのか、そして「co-entertainment」で互いを楽しませることで、どのように相手を温かく迎え入れる環境に整えていくのかをみていきます。

空間の条件(居住空間 vs. パフォーマンス空間)を並列させ、パフォーマンスをする身体がおかれている異なるモード(リアル vs. バーチャル)をシンクロさせるという、、もはや常套手段ともいえる方法で、常に変容する曖昧な状況と折り合いをつけていきます。

ライブ配信視聴(無料)の申込
アーティスト/振付
ラウル・エル・ラキティコ・ジュニア

コラボレーター・出演
八木光太郎

出演
デボラ・レミュエル

サウンドアーティスト
ハロルド・アンドレ

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嵐の丘に集まって | 宮内康乃
2021年9月25日(土)18:30-20:00 アーティストトーク付き
宮内による声のパフォーマンスと、コラボレーターである影絵師・川村亘平斎による光と影とのコラボレーションパフォーマンス。昨年度から3Csで取り組んだオンラインでの試みや、先に川村と実施したオンラインパフォーマンスを下敷きに、改めてリアル・パフォーマンスに挑戦する。バリで影絵を学び、芸能の哲学と継承という意識を持つ川村とのコラボより、これからのアートのあり方や未来への継承について考える。
パフォーマンスは川村、宮内に加え、宮内主宰のグループ「つむぎね」のメンバー、歌手のさとうじゅんこも出演し、全員が光と影、声の表現に携わり、この嵐吹き荒れる現代に我々が映し出す音、奏でる景色を描く。
ライブ配信視聴(無料)の申込
アーティスト
宮内康乃

コラボレーター・出演
川村亘平斎

パフォーマンス出演
つむぎね(浦畠晶子、尾形直子、八幡麻美)
さとうじゅんこ

キュレーター
松本千鶴

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ポスト・パフォーマンス・ディスカッション
2021年9月24日(金)18:30-20:30
2021年9月26日(日)16:00-18:00
ポスト・パフォーマンス・ディスカッションでは、日本の舞台芸術研究者、批評家らが3Csに参加するアーティストやキュレーターとともに、3Cs 2021 Tokyoにおける実験的な芸術実践やその創作過程についてディスカッションをします。
ライブ配信視聴(無料)の申込
司会
鴻英良

2021年9月24日(金)

登壇者
柴田隆子
前田愛実

2021年9月26日(日)

登壇者
桜井圭介
山﨑健太

BUoYの位置する東京・北千住は、江戸時代以降、宿場町として発展しました。戦前は遊郭があり、戦後は赤線地帯となりました。また、この地域には工場が多く、北千住は工場労働者の街でもありました。2000年以降、駅周辺は再開発が進み、大型商業施設や大学が建設され、整った街並みとなってきましたが、駅のすぐ横には昔の街並みを残す「飲み屋横丁」があります。この横丁をまっすぐに進みながら、住宅街を抜けた先に会場となるBUoYがあります。

BUoY は、2階は元ボウリング場、地下は元銭湯という歴史を持つ廃墟を改装してアートスペースとして2017年にオープン。様々な芸術分野の若手アーティストが多く集まっています。

パートナーフェスティバル:BUoY Festival

BUoY (ブイ)は、海に浮かぶ「浮標」です。沈めても沈まない指標であり、水上で方向を見失った船の目印にもなります。荒川と隅田川に囲まれた千住の歴史を内包しつつ新たなアートを発信して行く、また、若手アーティストを応援する、という意思を込めて、この名が付けられることになりました。「異なる価値観と出会う」場所としてBUoYを立ち上げる、というコンセプトは、他所者を受け入れ生活を共にするという、江戸時代から宿場町として栄えたこの街の多様性に対する寛容さと共鳴するものです。


3Cs タイダン・インターベンション: ロックダウンを超えたスピリチュアルなつながり
2021年8月26日〜8月31日

2021年7月9日、タイのCovid-19管理センターは、国家的なロックダウン政策を発表しました。越境型移動舞台芸術祭「Creator’s Credle Circuit」は、オンラインとオングラウンドのハイブリッドな芸術交流から、オンラインのみの交流への転換を余儀なくされました。今回のチャレンジでは、3Csアーティストが、タイ・ルーイ県ダン・サイ地区のアーティスト、学生、高齢者など、現代アートに馴染みのない地元の協力者とコラボレーションして、作品やストーリーを発表します。

ダン・サイ地区は、1560年頃にラオスとタイの王によって築かれた町で、マン川沿いに位置しています。仏舎利塔と寺院ワット・シーポーチャイ​​は、古来よりダン・サイの聖地として相互に結びついてきました。 最も有名なピーターコーン・フェスティバルでは、シャーマニズム、仏教、地元の娯楽文化が政治的にも穏やかに共存しています。それは、ダン・サイの人々の日常生活に根を下ろしています。この地域には、タイの他の地域とは異なる、生活様式、料理、儀式などの独自の文化や信念があります。それはこの町のユニークな歴史から生まれたものです。

2021年7月12日から25日までの間、Loei Art Fes 2021と共催のもと、3Csの6チームは6人のタイ人アーティストとペアを組み、オンラインでダン・サイ地区を探索し、地元の豊かな直感的なアート素材をどのように使えば、自分のアート作品の可能性を広げることができるかについて、独自の探求を行いました。また、現代アートを知らない地元の人々とコミュニケーションをとるために、自分の作品をどのように文脈化していくかを考えます。

タイのコラボレーターは、3Csのアーティストのアバターやリモート・ボディとなり、また批評的なコンサルティング・マインドを持って、地元の人々とつながり、アーティストとともに実際の現場で創造的な空間を作ります。

パートナーフェスティバル:Loei Art Fes 2021 (LAF)

ルーイのスピリットを讃えるタイのコンテンポラリー・アート・フェスティバルです。ルーイ 県のダン・サイ地区の公共・民間スペースに展示された、タイ国内外の30以上の複合芸術作品を体験することができます。